2021年度実施 沖縄県公立学校教員候補者選考試験 合格体験記 中学校国語
1. はじめに
私は、2021年度に初めて中学で臨任をするまでは、13年間県立高校で臨任をしていましたので、中学校のことをほとんど知らない状態で中学採用となります。3年間、沖縄教員塾に通っての合格となりました。また、41歳での合格です。気力体力を保つことにも苦労しました。似たような状況の方や、苦手克服をどのようにすればいいかと試行錯誤の一助になればと思い、この体験記を書かせていただきました。
2. 一次試験(一部免除のため、専門教科のみで受験)
(1)評論文・小説の対策
漢字・語彙
塾で火曜・土曜に行われる漢字テストで、正確な書き取りを目指しました。2年目からは、大きく丁寧に書くことを意識することで、二次試験の論文・模擬授業で生かそうと考えて書くようになりました。見当すらつかない熟語や意味を知らない熟語に関しては、辞典を引く。さらに、訓読みを確認し、字義と熟語の意味を関連付けるようにしました。この方法で、2年目から語彙力がついたとはっきりと感じました。
読む速度
1年目は、時間内に本文を読み、問題を全て解くことができないことが何度もありました。そのことを上高先生から指摘されることもあり「読書とは違う」ことを意識するようしても、思わず文章の内容について考えてしまったりしていました。
私は、入塾前から新聞を毎日読む習慣がありましたので、新聞を読むタイミングを出勤前の朝にし、「このページの1/4は、とにかく10分で読み切る」という読み方をするようにしました。3年目には、解き終わっても数分残り、確かめができるほどに速度アップしていました。
読書・文学史
問題文で気になった文章の著者の本を選ぶようになっていました。私は、小説よりも新書を好んで読んできたので、この数年は小説も意識的に読むようにしました。また、文学作品も改めて読み返すことも意識的にしていました。これで、文学史を単純な暗記としないようになったと思います。〇〇派の代表3作、別作家を読んでみる。という風にしたこともありました。好みではない内容だとしても、文学史を体感できたことや単純に読んだことのある作品が増えることで、日ごろの授業でも生徒へ紹介するような機会が増えました。
(2)古文の対策
本文の現代語訳せずとも内容を理解できるようになるまでには間隔を空けて、何度も同じ問題を解くことを意識しました。古文単語を覚えることも大きな力になります。『古文単語FORMULA600』(東進ブックス)付属CDを毎朝聴いて出退勤している時期も長くありました。塾の授業ノートが映像として頭に浮かぶほど、何度も見返しながら解答解説で自分の解答を見直すことを何より大切にしました。
その日にやる問題をあらかじめA3に拡大コピー(書き込みしやすくするため)。問題を解き終わった後は、解答解説などを見ずに現代語訳を拡大プリントに書き込むことを自分に課していました。自力で訳できなかった部分は品詞分解をし、文法を見直すようにしていました。これを繰り返したことで、自分が忘れがちな文法事項が何かに気が付けました。拡大コピーは上高先生からの解説と併せてノートに貼り付け、何度も見返すことをしていました。
授業の際に確認用で使用:古文・漢文の要点整理[改訂版](Gakken)
復習の際に使用:古文解釈の方法[改訂版](駿台文庫)、速読古文常識(Z会)
(3)漢文の対策
漢文は一番苦手意識の強い科目でした。しかし、古典文法の力がつくと、比例して漢文を読むことができるようになりました。古文と同じく、問題文を拡大コピーし、自力で訳することを心がけ、ノートに貼り付け見返すようにしていました。
また、塾から配布された句法まとめのプリントは、スマホのボイスレコーダー機能を使って、自分で読み上げ、その音声を聞きながら塾と家との往復をしていた時期もありました。覚えてしまうと、漢文を読むコツも同時に身についたと感じました。
漢文は、問題文などを音読することも大切だと思います。訓読文を音読するので、自然と集中力が高まります。退勤後、疲れた中での勉強はじめのウオーミングアップは、決まって漢文訓読でした。また、漢文特有の解釈などが難しく、『文脈で学ぶ漢文句形とキーワード』(Z会)を繰り返し読み、文章や解釈のパターンを身に着けるようにました。
(4)韻文
私にとっては点数に結びつかない設問でした。そのことを上高先生に相談したところ「百人一首を内容も含めて覚えるようにしたらどうか」とのことで、百人一首の資料集、国語便覧などを使って、和歌・歌人・修辞法をおさえることをしました。
(5)国語常識
塾で毎週行われる国語常識の問題のみを繰り返し復習しました。また、時間ができたらすぐに国語便覧を眺める(とりあえず、眺めるだけでもいいかと、手に取り開く)ようにするにしていました。これだけで、相当な試験対策になるはずです。また、塾での国語常識の問題は、何度か同じ問題が出題されます。同じ間違いをしないようにすることを意識していました。
(6)琉球・沖縄
学生のころから、沖縄出身の作家の作品を好んで読んでいたのがとても良かったと思います。また、私は祖父母同居で両親は今も方言で会話をします。幼いころから方言は日常会話の一部だったことも良かったと思います。塾での毎週のテストで不正解だった問題については、関連資料を読むようにしていました。
『新編 沖縄の文学 増補・改訂版』(高教組教育資料センター)は、もちろんですが、自分の興味関心と趣味を兼ねて、高校の沖縄の歴史の教科書もかなり読み込みました。問題などでよく目にした作品も、学校の図書館の奥から書籍を探し出して、読ませてもらうようにしました。沖縄出身作家の芥川賞受賞作品は、一読しておく必要はあると感じます。また、沖縄の文化などに興味を持つきっかけになりやすそうな池上永一さんの著作は楽しみの読書としてもおすすめします。
(7)学習指導要領
学年ごとにどの部分の文言に違いがあるのか、見てわかるように手書きをしたA5サイズのノートをいつでも持ち歩いていました。ところどころ穴あき空欄にしておくこともしました。また、スマホのボイスレコーダー機能を使って、出退勤や自宅と塾の往復の際に聴くようにしている時期も長くありました。
私は、教育実習だけでの授業だけで、経験や実体験がないまま学習指導要領を暗記していました。中学で勤務するようになれば、学習指導要領が日ごろの授業実践においてもかなり意識しながらの授業づくりとなります。
3. 二次試験
(1)受験調書
2020年度実施では、面接調書として書いたものが、2021年度では受験調書となり、1次試験を受ける人も全員提出となりました。前年度に1度は書いていたので、内容はほとんど変えませんでした。しかし、4月からの中学校での勤務経験を念頭において、見直しはしました。志望動機と自己PRの内容も中学での勤務経験を優先して書くように見直しました。
字を極力大きく、すっきりと見やすく丁寧に書くことを大切にしました。私自身の視力が落ちてきているので(老眼が入ってきているのかもしれません)、見やすい原稿というのが、どれほど有難いか、日ごろから身に沁みるようになっていたからです。本音を漏らすと、自分が見直す時にも、すぐに読めるようにした、という一面もあります。
(2)模擬授業
課題が事前に提示されたこともあり、さまざまな指導案に触れるようにしました。小学校国語の学習指導要領や学習項目を確認しながら、授業内容は時間をかけて練りました。
・ノートに全時間の指導案を手書きで書き出す→何時間目の学習を本時のどこで生かすのか考える
・本時の細案をノートに手書きで書き出す→本時全体の流れをシュミレーションできるため時間制限が気にならない
・那覇市指定の単元プランシート、授業プランシートを作成→模擬授業後の質問対策
この順に模擬授業の内容を練りました。
授業を練っている間は、6分間タイマーで計っての模擬授業の練習はしませんでした。練習を始めたのは、塾での1回目模擬試験の5日前に1人で2回。前日に勤務校の先生方を前に2回だけ行い、助言をいただいて、1回目の模擬試験に臨みました。第2回模擬試験で指摘を受けたあと、本番でどうするかを勤務校の国語科の先生、特に中学で勤務の長い姉には細かいところまで相談しました。本番までに模擬授業の練習を行ったのは合計10回程度だと思います。緊張感を保ったまま模擬授業に臨めたのは、練習をダラダラ続けなかったことにあったかと考えています。
模擬授業を練るうえで、一番意識したのは、模擬授業後の質問を想定することでした。塾で配布される二次対策の資料、模擬授業後の質問項目全てを応えられるように評価の場面、評価の方法、評価の規準、めあてと正対したまとめ、振り返りの視点などをノートに書き留めて、何度も確認していました。
コロナによる休校中、突如としてオンライン・リモート授業を実施したなかで行われた二次試験でした。ICT機器の活用に関しても、当時、毎日リモート授業で使っていたGoogleソフトの活用に関して急遽、質問を想定しました。面接でもその点を触れられました。2022年度以降の模擬授業ではICT機器を活用した授業を練る必要性が出てくる可能性を少し感じました。
授業案を練る際に参考にした資料
・『「少年の日の思い出」の授業』幾田伸司(東洋館出版社)
・『国語の授業にスリルとサスペンスを』河野庸介(教育出版)
・『指導と評価の一体化のために学習評価に関する参考資料』(国立教育政策研究所教育課程研究センター) ※YouTube研修動画あり
・中学校学習指導要領(平成29年告示)解説国語編(文部科学省)
・令和3年度版「問い」が生まれる授業サポートガイド
・沖縄県学力向上推進5か年プラン・プロジェクトⅡ
(3)面接対策
二次対策開始の際に塾で配布される『二次対策』を活用しました。初めて二次に進んだ2020年度の対策の際に、冊子でまとめられている過去の面接における質問一覧のページに直接、自分なりの答えを書き込んでいました。2021年度は、それをExcelで内容・項目別に1分間でこたえられる分量を意識しながら文字に起こしました。頭の中にある信念や心情を文字に起こすことで、さらに「試験官に絶対に伝えておきたい自分の核」の形を持つことができたと思います。
私が常日頃から実践していることを、沖縄県教育委員会の示す指針に照らし合わせて答えるように考えるようにしていました。これで、自分の言葉として答えられたと思います。
4. 勤務と勉強のルーティン
塾に通っていた3年間は常に勤務をしながらでした。勉強時間の確保と勤務の問題は全員、苦慮していることだと思いますので、項目を立てて書き記しておきます。私は、独身で実家暮らしです。家庭を持っていらっしゃる方や子育てをしている方とは比にならないほど、勉強時間の確保という面においては恵まれた環境です。
[勤務に関して]
・土日の出勤は、よっぽどの場合以外はしないよう、平日に生徒対応、保護者対応など迅速に動くことが当たり前になったので、良いことがたくさんありました。
・火曜日は17:00に退勤すると、事情を生徒や同僚に理解してもらい、実行していました。
[勉強のルーティン]
・朝5:00起床、出勤時間40分前まで勉強時間。漢文の音読などで頭を起こす。
・出退勤時、古文単語のCD、学習指導要領の読み上げ音声、漢文句法の読み上げ音声を状況に合わせて聴きながら移動。火曜日の塾帰りはラジオか音楽を聴いて移動し、気分転換。
(曜日別に取り組んだことの目安)
月:学習指導要領、先週火曜の内容を復習
火:退勤後、塾に向かう途中で先週の内容を復習。帰宅後は、即就寝。
水:前日のテスト、問題の正解できなかった部分に関して見直し、解説などを読み込む。
木:国語常識、琉球・沖縄に関する内容。火曜日の漢字テストを自分で再テスト。
金:古文漢文の復習、過去問・模擬試験などの見直し、解きなおし。
土:午前中はゆったり過ごす。塾から帰宅後は土曜の内容の見直し。
日:やりたい内容をやる。土曜の国語常識テスト、琉球・沖縄テストの見直し。
塾1年目:塾の勉強についていくだけで精一杯、テストの不正解数も多かったため、見直しや復習も間に合わないことが多く、睡眠時間が安定せず、疲労蓄積で塾を欠席することがよくあった。
塾2年目:勉強のペースがつかめてきたので、時間配分がうまくいくようになった。曜日別で取り組む中心的内容を決めたのもこの頃。朝の時間も活用できるようになった。4~6月の休校期間がかなり貴重な時間として活用できた。
塾3年目:初めての中学校勤務のため、火曜日の復習は土曜日の午前、土曜日の復習は土曜日の夜。毎日21:00ごろまで仕事に追われる状態だったため、土日と塾にいる時間を有効利用することを意識した。
5. 採用試験対策以外のこと
・特別支援学校教諭二種の免許取得:加点はもちろんですが、日ごろに生徒との接し方や指導にも役に立ちます。
・模合は欠席:年に数回参加するにとどめ、切羽詰まったり行き詰ったりした時の気分転換や相談の場にできました。
・職場のお付き合いの「飲み会」は、歓迎会と忘年会と送別会の1次会のみ参加:普段から互いの信条を話す。
6. さいごに
採用試験に集中した3年間は、長い目で見た、自分の生活のタイムマネジメントができるようになったと感じています。時間の捻出との闘いといってもいいほどでした。また、コロナウイルスという見えざる敵に備える日々ともなりました。が、このことをきっかけに「命どぅ宝」の言葉の重みを心から痛感する日々でした。この経験は、これから生徒の命を預かるうえで、価値ある経験にしていこうと考えています。
入学から卒業まで、生徒の成長と変化を見守りたい。これが、採用試験の勉強を頑張る原動力でした。皆さんにもそれぞれの原動力があるかと思います。どうか、体と心を大切に目標達成に向かってください。合格はスタートラインの手前だと感じています。が、これからの茨の道も歩んでいけるだろうと、思わせてくれるほどの力と知恵をこの塾で得たとも感じています。上高先生をはじめ、これまでお世話になった同僚や先輩、友人、特に家族には感謝しております。
言葉が足りなかったり、分かりにくい点があったりする文章だと思いますが、少しでも参考になる点があればという思いで、書きました。皆さんを応援しています。
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