2019年度実施 沖縄県公立学校教員候補者選考試験 合格体験記 高等学校国語

1、はじめに

 私は、3年間沖縄教員塾に通い、専門教科と教職教養を受講しました。採用試験を7回(2012年~2019年度)受けましたが、本腰入れて勉強するようになったのは、2015年度からです。その時、臨任として赴任した高校に初任研の先輩がいたことが大きな刺激となり、採用試験の勉強に力を入れるようになりました。以下に、私の一次・二次試験の対策と受験生活の三段に分けて記します。

2、一次試験対策

A専門教科
[演習]

 一次試験の対策で最も意識したのは、制限時間内にすべての問題を解くこととケアレスミスをなくすことです。「『時間配分を間違えた』という言い草は、『本来ならもっととれたはず』という自己弁護、または心理的な防衛機制の働きとしての合理化にすぎない」ということであり、ケアレスミスは、「努力の積み重ねが意味をなさなくなり、復習時に『本当は分かっていた問題だから……』と勝手に軽視する上に、自分の人生に配慮(ケア)が欠けている(レス)ことの証拠だ」と強く自分に言い聞かせました。
 そこでまず、一つの設問に割く時間を設定して、それを厳格に守るということを実践しました。(というのも、2015年~2017年度の試験では、数点差で一次不合格だったからです。)はじめは、一つの設問を見切ることに大きな抵抗感がありましたが、模擬試験や過去問を解くなど、演習を繰り返すうちに、同じ設問に長時間立ち止まり迷って回答しても正答率が大して上がらないことに気づきました。そこで、演習では、評論や小説、古典、漢文の分野については、一つの小問に1分以上立ち止まらない(実際は1分以上考えますが)ことを決め、学習指導要領や国語常識問題、沖縄の文学の分野の設問は一問最低でも30秒以内で解くということを自らに課しました。すると、見直しの時間も取れるようになり、マークミスなども減らすことができるようになりました。

[評論]

 評論は特別な対策はしませんでした。塾で扱っている『河合塾 入試精選問題集』を授業で解いて、意味や読みが分からない語句があれば、辞書で調べることはしました。それから、一度解いた文章は、分かるまで何度も読み返し、すべての選択肢を、それがなぜ正答/誤りと言えるのか、自分で記述説明できるようにしました。また、余力があれば、過去問や模擬試験で出題された著書や著者のその他の著書を読むようにはしました。そうすることで、自分がどのようなトピック・文体・論理構造が得意、あるいは苦手なのかある程度自覚できるようになりました。

採用試験対策を始めた頃に用いて役に立った参考書及び書籍
・『出口汪現代文センター国語講義の実況中継』
・『山川出版 倫理用語集』

[小説・韻文]

 評論の対策と同様、小説・韻文も特別な対策はしませんでした。塾で扱っている『河合塾 入試精選問題集』を授業で解いて、意味や読みが分からない語句があれば、辞書で調べることはしました。それから、一度解いた文章は、分かるまで何度も読み返し、すべての選択肢を、それがなぜ正答/誤りと言えるのか、自分で記述説明できるようにしました。

採用試験対策を始めた頃に用いて役に立った参考書及び書籍
・石原千秋『大学受験のための小説講義』(ちくま新書)

[古文]

 古文の対策に最も時間を割きました。まず古文単語を覚えることから始めました。古文単語は単語帳を何回も見返し音読して覚えました。私は、語呂で覚えるといったような覚え方が好きではないので、古文単語は、語源を最優先で覚え、次にその古文単語の語源から意味がどのように派生したのか確かめながらを覚えるようにしました。助詞や助動詞も個別で覚えるのではなく、文章の中で、意味を理解するようにしました。ただやみくもに暗記するのではなく、その文脈の中ではどのような意味になるのか、自分で推測しその後、実際はどうなのか確かめるといった段取りで覚えるようにしました。

採用試験対策を始めた頃に用いて役に立った参考書及び書籍
・『みるみる覚える古文単語300+敬語30』いいずな書籍(たぶん学校専売)
・芦田川康司編『新要覧古典文法』日栄社(高校時代、センター試験対策で使ったもの)

[漢文]

 古文の次に時間を割きました。まずは漢文の句形を覚えました。古文単語同様に、何度も見返し音読して覚えました。それから、漢文が読めた時でも漢字辞典を引き、漢字の意味を確かめました。意味を知っていると思い込んでいる漢字でも、自分の知らなかった意味を知ることも多く、それが楽しくもありました。また、諸子百家の基礎知識を理解するために便覧や倫理の用語集なども用いました。

採用試験対策を始めた頃に用いて役に立った参考書及び書籍
・『漢文必携』桐原書店(高校時代、センター試験対策で使ったもの)
・『基礎からのジャンプアップノート漢文句形』旺文社
・『山川出版 倫理用語集』

[国語知識問題]

 塾でのプリントを解き、正しい選択肢も誤りの選択肢も辞書や便覧を用いてすべて調べ尽くし音読しました。

[沖縄の文学]

 『新編 沖縄の文学 増補・改訂版』をひたすら読み込みました。節ごとに大体週一回のペースで読みました。このペースだと、順調にいけば、年間で3周くらいは読むことができます。私の場合は、沖縄の近現代文学(目取真俊や崎山多美、大城立裕、又吉栄喜、大城貞俊など)は大学時代に読んでいたことと、2015年に赴任していた高校の学校設定科目「郷土の文学」の授業を担当し、先述の『新編 沖縄の文学 増補・改訂版』を用いて授業していたことが試験勉強に非常に生かされました。

B一般・教職教養

 一般教養は対策せず。教職教養は、採用試験の勉強に本腰入っていない時に、『教職教養ランナー』を2周しました。しかし、どこに力を入れればよいのか分からず、教職教養は30点前後で低迷していました。沖縄教員塾で試験対策をするようになってからは、塾の教材だけを使い、40点台をほぼコンスタントにキープできるようになりました。①教育史②教育心理③教育原理④教育法規(特別支援分野含む)⑤学習指導要領を優先的に取り組むと点数が上がるようになりました。また、最終合格した2019年度には、二次試験対策も兼ねて、沖縄県の出す文書も3月末に一度、6月頃に再び読み込むようにしました。

3、二次試験対策

[論文]

 一次試験を終えてから取り組みました。塾での論文課題は、2つしか完成させることができませんでしたが、これまでの赴任校で、ここ数年の間に採用試験に最終合格した先輩方から情報と助言をいただきながら、赴任校などの管理者の添削指導・助言をもとに、論文を合計4つ完成させて、本番に臨みました。塾での論文の模擬試験では一度も時間内にすべて書き終えることができなかったので、二次試験一日目の前日まで構想の作り方の確認や想定問答を何度も行いました。本番当日は、想定外のお題でしたが、時間内に最終行のマスに句点を打てたのは奇跡だったと思います。

[面接]

 面接対策は、赴任校などの管理者からの情報収集に時間を割きすぎたために、面接練習を始める時期がおそくなってしまうなどの準備不足もあり、塾での面接練習でも全然上手くいきませんでした。その時に先輩教師に「正しいことを言おうとするのではなく、自分が信じていることを面接で話した方がよい」という助言をいただき、本番で吹っ切れるきっかけになりました。本番では、「自分が信じていることを面接で話して不合格になるなら、自分の生活の中で関わる人たちや生活そのもの、教職、生徒に対する向き合い方を、もう一度問い直して、出直せばよい」と開き直って臨みました。結果的によかったと思います。

[模擬授業]

 模擬授業は塾の高校国語の一次合格者の皆さんと模擬授業の練習を重ねました。上高先生の出題予想にしたがって、「羅生門」「短歌・俳句」「鶏口牛後」「奥の細道」の4つに絞って模擬授業の構想を練りました。赴任校などの管理者や前任校で共に働いたことのある他教科(理科・英語)の一次試験合格者や最近3年以内に最終合格した先輩方(国語・体育)に「奥の細道」と「羅生門」の模擬授業を見てもらいました。その時に管理者には「どこの学校の生徒を相手にしても、興味関心をひける授業づくりをするように」「生徒がその日どんな活動をするのか見通しを持つことができるような授業導入をするように」と助言をいただきました。また、他教科の一次試験合格者の模擬授業に関する助言は貴重です。同じ教科の者同士ではなかなか気づかないことを助言していただけることもありました。本番では、上高先生の予想を信じて、最も力を入れて準備した「奥の細道」が出たので、本当に運がよかったと思います。

4、生活について

 仕事をしながら、勉強時間を確保するというのは、実際にやってみると容易なことではないと私は痛感しました。私の場合、以下のことを自らに課しました。

〇仕事(生徒)を最優先する
〇自分のやりたいことを、受験を理由にあきらめない
〇自分が居る必要がないと判断した時間・場所・関係のもとに身を置かない
〇スマートフォンを捨て、ガラケーに替える
〇週2~3で運動(筋トレ)をする

 特に、スマートフォンの弊害(①依存性②情報の粗雑さ③いつでも、どこでも、誰(何)とでも「つながってしまう」、というより「つながれてしまう」こと)による生活の質の低下を強く懸念し、ガラケーに替えました。そして、最も運動(筋トレ)をしていた時期(2016~2017年度)は一次合格もできませんでしたが、最も学力が向上し、なおかつ精神状態が安定していました。(最終合格できた2019年度は、さまざまな出来事が重なったり、自らの状況・状態の変化もあって、試験勉強をする時間を確保するのに精一杯だったため、運動する時間的余裕さえなく、心の余裕を完全に失っていました。)
 塾の授業の復習などは、塾の授業ない平日であれば、19:30~23:30の間に、土日であれば、塾の授業の前や終了後に、一人になれる、かつ音読しても人の邪魔にならない場所(自宅や公民館、学校図書館の書庫室、休日の学校職員室、客の入らない飲食店等)で行いました。実際に取れた学習時間は平日1~2時間、休日3時間程度でした。体力的・精神的に、本当に勉強できない日はとにかく本を読みました。

5、最後に

 沖縄教員塾のよいところの一つは、「情報の質・量ともに優れている」ところだと思います。ですが、その情報をただ取り入れるだけでは、その情報たちに飲み込まれてしまいます。最近合格した先輩方や管理者から指導や助言をいただくのももちろん大切ですが、「誰かが言っている『正しいこと』」にタダ乗りするのではなく、「自分の思う『正しそうなこと』」を信じるのがよいと思います。私は、「それを信じることで私自身が自信を持つことができるか」「本番でゆるぎない自信を持ってそれを実行できるか」という基準で最終的な情報の取捨選択をしました。

 それから。二次試験の対策をしているときに、ふと気づいて考えたことですが、教職に就こうとしている私(たち)が求められているのは、そもそも自分自身が「良き学び手であること」ではないか、ということです。そして、「良き学び手」とは、「自分自身が他者に開かれている者」のことではないか、ということです。そのことに気づいた(ような気がした)とき、二次試験の対策や本番当日にあたって、自分が何をするべきか、何を語るべきか、どのような立ち振る舞いでいるべきか、「誰かの言葉で、頭で、理解した」のではなく「自ずから、腹の底から、納得できた」ような気がしました。遅まきながら、ようやく気が付きました。そのことをあらゆる形を通して気づかせてくれた、これまで私をサポートしてくれたすべての人に感謝してやみません。これまで私をサポートしてくれたすべての人に恥ずかしくない教員として、私自身が今後さらに「良き学び手」でありつづけるつもりです。
 ここまで要領を得ない、回りくどい文ではありましたが、私が伝えられることはほとんどすべて書いたつもりです。その人に合った試験勉強のペースや学習法がきっとあると思います。この文章がそれらを見つける一助となれば、これほど幸いなことはありません。読んでくださったあなたが、あなたの理想とする姿で、あなたが望むものを手にすることを祈っています。