2019年度実施 沖縄県公立学校教員候補者選考試験 合格体験記 高等学校国語

はじめに

 これは個人の体験記ですので、こうすれば合格できます、といったハウツーではありません。しかし、私の体験や学習方法の中に、皆さんの合格に繋がるヒントがあるかもしれません。私は高校からも教壇からも3年以上離れており、今回の受験に際して、一部免除の適用や特別支援の加点がありませんでした。かといって、勉強ができるわけでもなく、初めは塾の授業についていくことすらできていませんでした。それでも、今の自分が合格に近づく方法を考え、周囲の助言を参考にしながら対策に取り組みました。受験対策をすることで、私のような者でも合格できるということが、皆さんの励みになれば幸いです。

1.一次試験対策

 私は今回が10回目の受験です。受験勉強に本腰を入れ始めたのは5年前でした。それまで、市販の採用試験対策問題集などを解いていましたが、この頃から専門はセンター対策の問題集や高校で使っている問題集を解くようになりました。非常勤で勤務時間が少なく、学習時間を確保できたおかげで、翌年には30番台を切ることができました。しかし、再び臨任で働き始めてからは仕事に追われ、学習時間を取れなくなりました。出題範囲を網羅した学習計画が立てられず、自主学習に限界を感じ始めていました。そんな時に、沖縄教員塾のことを知りました。那覇での勤務がしばらく続けられることになり、平成30年2月に入塾しました。約半年、塾で勉強しましたが、平成30年度実施の試験では、専門を時間内に解ききれず順位を落としました。

年度 試験結果
H27 125点(103位)
H28 180点(28位)
H29 170点(29位)
H30 172点(37位)
H31 200点(6位)一次試験合格
二次試験合格(1位)

 第4期は開講から出席できたので、基礎の部分から自分の理解度を再確認することができました。これまでの学習方法を見直すきっかけにもなりました。以下は主に第4期での私の取り組みです。

(1)専門

 授業の際、意識していたのは時間です。私は読むのが遅い上に、理解できるまで読もうとする癖がありました。しかし、試験ではいかに点数を取れるかがカギです。時間内にすべて解ききることが得点を引き上げます。「時間をかけて読むのは単なる自己満足」と言い聞かせ、時計を確認しながら問題を解くようにしていました。授業中、上高先生から質問があるときは、自分への指名でなくても心の中で答えていました。
 授業以外の時間は、ほとんど復習に当てました。学習時間の7割が古文・漢文でした。調べたけれど、わからなかったことは、些細なことでも上高先生に質問していました。必ず答えてくださいます。
 指定教材を含め、問題集の「はじめに」や「本書の構成と使い方」、「設問攻略法」には必ず目を通しました。そこには教材の活用方法だけでなく、学習のヒントがたくさん載っています。私は模試の後などに読み返して、自分の問題の解き方や学習方法を見直しました。授業では「付録」も確認していました。

〈学習指導要領〉

 毎日、範囲を決めて声に出して読みました。目標と必履修科目の二つは特に重点的に勉強しました。「系統表」が配布されてからは、そちらを使用しました。テストで間違えた箇所は、指導要領を読みながら紙に漢字を書き、その漢字だけを見て正確に言えるか確認していました。声が出せない場所では赤シートも使用しました。

〈現代文〉

 塾指定の問題集を中心に学習しました。問題を解くときに自分が線を引いた箇所と、先生が黒板に書き出した箇所、解答の根拠となる箇所が一致しているかを確認しました。解説を踏まえて、なぜ間違ったのかを分析しました。わからない言葉がある時は問題に関係なくても辞書を引きました。『大学入試現代文単語Vocabulary550』(いいずな書店)や国語便覧も使用しました。授業では演習問題しか扱わなかったので、復習が早めに終わったときに時間を決めて典型問題を解きました。漢字テストで間違えたものは国語辞典、漢字辞典で確認しました。韻文は塾の教材と国語便覧、本を読んで学習しました。

〈古文〉

 塾指定の問題集や確認テストが中心です。授業には『ベネッセ全訳コンパクト古語辞典』を持参し、調べた単語には蛍光ペンでマークしていました。復習するときは、まず本文を品詞分解して、プリントや解説にある重要語句から確認しました。それから助動詞と敬語をすべて確認します。形容詞・形容動詞は意味を類推してから辞書を引くようにしていました。主語を補いながら自分なりに口語訳をし、解説の現代語訳と照合しました。辞書を引くたびにコラム等を読んでいたので、復習に3~5時間かかりました。通勤中は車内で『速読古文単語CD[改訂版]対応』(Z会)を聴いていました。ときどき「角川ソフィア文庫」を読み、原文を訳せるか試していました。

〈漢文〉

 塾で配布された「漢文句法まとめ」を毎日確認しました。白文で読めるか、訳せるか試し、たまに書き下し文を書けるかも確認しました。塾指定の問題集と確認テストを中心に学習しました。授業には『必携 新明説漢文』(尚文出版)を持参して、句法と語彙をおさえました。復習では、問題文を書き下し文にした後、白文で読めるまで繰り返し音読しました。訳を考える際は塾のプリントだけでなく漢字辞典も使用しました。復習には2、3時間かかりました。その他、『漢文ゴロゴ』(スタディカンパニー)を使用しました。また、塾にある「諸子百家」関連の本を借りて読み、内容理解に役立てました。

〈国語常識・沖縄文学〉

 テストで間違えたところを中心に学習しました。国語便覧、国語活用資料集、教材「文学史」、『新編沖縄の文学』、その他関連図書を使用しました。私は一問一答のように暗記して覚えるのが苦手だったので、本や解説といった文章を読むようにしていました。国語常識は他の分野(現代文・古文・漢文)の学習の際、細かいところまで取り組むことで身についてくると思います。また、得点力を少しでも上げたくて、試験の1ヶ月前からは知識問題の学習時間を増やしました。読解力よりも短期間での成果が出やすいと考えたからです。

(2)教職教養・一般教養

 教職教養は塾の教材を中心に学習しました。上高先生は出題可能性の高さと学習の優先順位を提示してくれるので、それに従って取り組みました。法規や施策など相互に関連しているものが多いので、それぞれの関係性や言葉の異同を比べながら学習しました。授業には「引用集」と『教育用語の基礎知識』(時事通信社)を持参して、暗記というより理解を心がけ、学習内容の定着をはかりました。一般教養はテスト後に解説を読む程度でした。

(3)特別支援免許

 経験年数が足らず免許取得はなりませんでしたが、特別支援の勉強をしたことで、教職教養の学習理解が深まりました。また、生徒支援の姿勢は、二次試験で何度も言葉にした「生徒に寄り添う教師」を具体的にイメージする手立てとなりました。放送大学の勉強があったことで、学習時間の使い方を工夫する契機にもなりました。単位取得は楽なことではありませんし、加点に繋がらなかったのは残念でしたが、後悔はしていません。

2.二次試験対策

〈論文〉

 一次試験の翌日から取り組み、塾で用意された10課題中、9課題まで書きました。ノートに課題文と構成メモなどを書き出すことから始めました。初めて書いた論文は、18時間かかりました。合格点をもらえた論文を持ち歩き、県の施策と併せて確認していました。対策資料の他に、『成功!論作文』(小学館)を参考にしました。

〈面接・模擬授業〉

 初めての二次試験だったので、報告書や二次経験者の話、2度ある模擬試験から、試験当日のイメージを固めました。面接は対策資料にある質問予想をすべて確認した上で、定番のものや準備に時間がかかりそうなものから取り組みました。『面接試験の攻略ポイント』『面接試験・場面指導の必修テーマ100』(実務教育出版)も参考にしました。合格発表の翌日、前勤務先の校長先生に面接練習と教室利用のお願いに行きました。快く引き受けてくださった上に、他の職員も模擬授業を見てくれて、本当に恵まれた環境で対策をさせてもらえました。また、模擬授業の練習では塾のメンバーが力になってくれました。二次対策では彼らが心の支えでした。先生が予想した教材を高校メンバーで割り振り、互いの授業を見せ合いました。異なる校種・教科の意見も非常に参考になりました。面接も模擬も、奇を衒わず、いかに「自分らしさ」を出せるかが大切だと感じました。

3.生活

(1)勉強する場所

 ①自室の机、②勤務先、③学習センターの自習室、④車内、⑤カフェ、⑥塾

 ①基本的には自室です。授業のない日は帰ったら机に向かうようにしていました。復習途中のものは教材等を広げたまま仕事に行き、帰ったら続きから始めるというスタイルです。②帰宅時間を交通渋滞とずらすため職場で勉強してから帰る日もありました。③自室で集中できないときや近所の図書館に寄る日は、図書館の下にある学習センターを利用していました。④通勤に片道1時間かかっていたので、車内では古文単語CDを聴いていました。CDに現代語訳は収録されていないため、テキストも常備しておき、駐車場に着いてから訳せなかった単語や文章を確認していました。⑤塾の教材や県の施策を読み込む時はカフェも利用し、読み終えるまで帰らないようにしていました。これは気分転換も兼ねていました。⑥土日は授業の後に1~2時間ほど塾で復習してから帰るようにしていました。資料が充実しているので、できる限り塾で学習した方がよいと思います。

(2)時間の管理

 仕事にやりがいもあり、手を抜きたくなかった私は、できるだけ授業に出席できるよう、残業する日を決めて調整しました。年間計画を見ながら前倒しで仕事を進め、特に試験の1ヶ月前あたりに学習時間が取れるようにしました。ヘアドネーションをして髪を短くしたことで、1日25分の時間を捻出することができました。一次試験の勉強をする場合、ノートは使わない方が時間短縮になると思います。私はプリントやテキストへ書き込んだり、付箋を使ったりして学習しました。記憶確認のためのアウトプットは、テストと裏紙で十分でした。

(3)新聞と本を毎日読む

 朝は新聞、夜は本を読んでいます。本は1ヶ月に3~5冊を平行して読みます。試験対策も兼ねていたので、なるべく異なるジャンルを読むようにしていました。塾の推薦図書も参考に選書しました。

(4)睡眠が最優先

 居眠り運転防止のため、睡眠時間の確保を優先していました。睡眠の質が学習効率を左右すると知ってからは、18時以降にカフェインを取らないようにし、就寝1時間前にはスマホ・TV・PCを見ないようにしていました。二次対策の時はハイになって、なかなか寝付けなかったのですが、最低4時間は横になるようにしました。

(5)体調管理・気分転換

 基本的なことですが、うがい・手洗いは毎日欠かさず行います。インフルエンザ注意報が出たときは、念入りに歯磨きをし、紅茶を飲むようにしていました。ストレスが記憶力を阻害すると聞き、勉強を楽しむことも意識しました。塾の模試がある日を節目にして、この復習が終わったら映画を見る、友達と食事に行くなど、ご褒美を用意して勉強に対するモチベーションを維持していました。

おわりに

 採用試験は競争試験ではなく選考試験ですから、きっと「運」も必要です。合格体験記を書くに当たり、私は出会った人や環境、時機に恵まれていたなと改めて実感しました。しかし、試験は運だけで受かるものでもありません。塾に入り学習環境を変えたこと、生活習慣や学習方法を見直したこと、情報を集め出題を予想したこと。こうした行動がなければ、今回の合格はなかったと思います。正直なところ、私は一次も二次も合格している自信なんてありませんでした。ただ、「結果はわからないけれど、今の自分にできることはやった」という自負だけはありました。合格するまで受け続けるつもりでいたので、これまでの取り組みは絶対に無駄にならないと信じて発表を待っていました。
 上高先生は「合格するために必要なことをしてください。」とおっしゃいます。そのための助言も惜しまずにしてくれます。合格するために何が必要なのかを考えていると、自ずとやるべきことが見えてきました。自分の弱さと向き合うのは本当に苦しかったですが、支えてくれる人のありがたさや、教師を諦めきれない自分に気づくことができました。気づいてからは迷いがなくなり、気持ちが楽になりました。本気で教師を志し、そのための努力を惜しまなければ、きっと結果がついてきます。(未熟な私でも合格できたのですから!)自分を信じてください。信じられるまでやってみてください。