平成29年度実施 沖縄県公立学校教員候補者選考試験 合格体験記 中学校国語

1 はじめに

 私は今年、17回目の受験で合格することができました。今年度初めて中学校国語を受験し、それ以前は高等学校で受験していました。大学卒業後から今回の受験までに、結婚と三度の出産を経て採用試験に挑戦し続けてきました。仕事・家事・育児をしながら、どのように対策してきたのかを書き記したいと思います。特に、私と同じように子育てしながら受験している方に、少しでも参考になれば幸いです。

2 これまで

 私は沖縄教員塾に2年間お世話になりましたが、入塾するまで(特に子供を持ってから)は、全くと言っていいほど試験対策に充てる時間を作れていませんでした。試験結果も合格するには程遠い順位にいて、自分の基礎力のなさに情けない気持ちでいました。この状況を変えたい一心で、夫と双方の両親に相談し、入塾することにしました。1年目は塾に通うだけで精一杯でした。「塾に入った」という変化を持った状況のみに満足していた気がします。自宅での学習時間を持つまでに至らず、また出席率もよくありませんでした。その中で臨んだ試験は、点数も順位も伸びましたが、変わらず合格には届きませんでした。2期目に入り、校種変更することを決めてからは、年齢的なこともあり「絶対に今回で合格したい」という気持ちが強くなり、毎日家でも勉強する時間を捻出するように心がけました。家にいるときは子供のことが優先事項になるので、思うように時間が取れませんでしたが、毎日学習指導要領や文法・句法テストのプリントを眺めるだけでもするようにしていました。とにかく、一日の中で10分でも「試験のための勉強をする」ということを続けるようにしました。
 自宅で勉強時間を作れない分、火曜日の授業後は塾に残り、その日のチェックテストの誤答部分を解きなおすこと、指導要領をひと通り読むこと、掲示されている新聞記事に目を通してから帰宅していました。土曜日は授業前早く塾に来て勉強し、授業後は少なくとも1時間は塾で勉強してから帰るようにしていました。また、車の中では古文単語のCDを聴き、携帯のアプリで古語や句法を確認するなど、少しでも勉強に向かっている時間を作るようにしました。週2日(6時間)塾に通うことと、毎回のチェックテストを受けるだけでも力がつくと思います。ですが、復習までしっかりこなし、知識を自分のものにするにはそれ以上に時間が必要です。入塾当初から、2期目の6月までは授業会員として在籍していましたが、周りの受験生に比べて勉強時間が少ないことに焦りがありました。そのため、今回の試験直前1か月は夜間土日会員に切り替え、試験前日まで毎日塾に来て勉強時間を確保しました。1年目はその方法がわからずにいましたが、2期目に入ってからは些細なことでも上高先生に相談するようにしました。先生からのアドバイスをもとに、いろいろと工夫しながら勉強していきました。それが今回合格できた大きな要因だと思います。

3 一次試験について

 私は一般教職教養が免除だったたため、専門国語のみの受験でした。

〈古典分野〉

 古文・漢文ともに火曜日の授業内容をおさえること、翌週の火曜日までに復習することを中心に勉強していました。①わからない単語はそのつど辞書で調べる、②文法句法を覚える、③チェックテストで間違えた部分を解きなおす、この三点に取り組んでいました。授業内容を理解することに加えて、古文教材は問題文を品詞分解すること、漢文教材はテキストで書き下し文が問題になっていても、句法を理解できているか確認するために訳まで解くこと、訳を問われている問題でもしっかり書き下しができるか、書き下し文まですることを授業時間内に取り組むようにしていました。
 入塾1年目は、土曜に設定されている記述式の演習問題に取り組んでいましたが、2期目に入った際に先生からのアドバイスで、古典文法や漢文句法の基礎をしっかり固めるために、火曜日の復習が間に合っていないときは、土曜日の授業中に火曜日の復習をしていました。基礎力が脆弱な状態で記述式の演習問題に取り組んでも力にならないからです。できるだけこの方式に甘えないようにしたかったのですが、結局ほとんど土曜日は火曜日の復習をしていました。ただし、現代文の演習だけは解くようにして、その分古典分野の復習は授業後の時間に終えてから帰るようにしていました。
 塾の指定教材と、配布される解説プリント以外で参考にしていたテキストは、以下の三冊です。
  『基礎から学ぶ 解析古典文法』 (桐原書店) 
  『新徹底理解 高校漢文』 (東京書籍) 
  『超基礎がため 古文教室 古典文法編』 (旺文社)
 桐原と東書の二冊は、学校副読本で基本的な疑問も解決できるような解説文が多く、とても役立ちました。『超基礎がため~』は、高1の古典入門の授業に応用できるような、言葉の通り「超基礎」の部分から説明しているので、古典文法に苦手意識の強い人におすすめです。
 単語や助動詞の確認をするのに利用していた携帯アプリは、「古文・漢文(古文単語、古典文法、漢文)」(学校ネット)です。四択形式でランダムに出題されるので、ちょっとした時間に利用していました。

〈学習指導要領〉

 全文をノートに書きました。フリクションで色分けして記入し、赤字(下敷きで隠すと見えなくなる部分)を徐々に増やしていきました。全文を通して流れ全体を掴むように覚えたかったので、ノートにページ番号を振って、ページごとに空欄部の語群だけのプリントを作成し、最初は語群を見ながら空欄補充する形式で解いていました。そのうち語群プリントがいらなくなってくるページと、何度も間違えるページが出てきたので、ある程度暗記できてからは苦手なところを繰り返し解きました。

〈沖縄の文学〉

 『新編 沖縄の文学』(高教組教育資料センター編 沖縄時事出版)からの出題なので、テキストでキーワードになる単語をチェックして、何度も音読し、単語は書いて覚えました。塾のチェックテストの問題も繰り返し解きました。

〈国語常識〉

 漢字テストで間違えた語句は国語辞典で調べる。併せて語句の意味も書き込むようにしました。正解した語句も、語彙がぱっとでてこないものは意味を調べて書き込んでいました。言葉の意味がわかれば、そこから関連する漢字が思い浮かぶと先生が仰っていたので、毎回の漢字テストは意味まで考えて解くようになりました。漢字力とともに、語彙力もついたと思います。文学史や対義語、外来語などは、入塾してからの2年分のプリントを解いていきました。文学史のテストプリントは、出題されたことに関連するキーワードを問題文の横に書き出してまとめていました。国語便覧を活用して確認していきました。

4 一次試験後から一次結果発表まで

 試験に手ごたえは感じられませんでしたが、いずれにせよ採用試験を突破するために二次対策は必須だと思い、自己アピール文と論文に取りかかりました。自己アピール文は3回程度の書き直しで済みましたが、論文に大苦戦しました。最初のころは一題仕上げるのに半日以上かかるような状態でした。
 塾で配布された県教委の主要施策の冊子を読んでは書き、書いては直しを繰り返していました。結局、課題10テーマのうち、3テーマしか書くことができませんでした。先生が予想した問題が出題されたことで、二次試験本番で書き上げることができたと思います。二次対策に入ってからは論文以外のことも入ってくるため、一次対策をしながら少しずつでも論文は書き進めていくことが大切だと感じました。

5 二次試験について

 今年は一次試験の結果発表が遅かったこともあり、かなりタイトスケジュールでした。二次対策オリエンテーション後に、二次メンバーで試験までのおおまかなスケジュールを立て、情報交換しながら対策を進めていきました。特に模擬授業は、出題されるであろう単元を手分けして、授業できる人からどんどん練習していきました。お互いの授業を見て、参考になる点や改善点を話し合いました。同じ単元の導入部分でも、おさえるポイントはおさえながらも、人によって切り込み方が違って、授業の組み立て方の勉強になりました。また、他教科・他校種の方たちの模擬授業も見ることができたことも、大きな刺激になりました。塾では黒板を使う時間が限られていたため、粗い指導案の状態でも、勤務校ではエア授業を何度もして、場慣れするようにしました。
 面接は、塾の二次対策資料にあった質問事項に対して、面接調書に書いたことや、これまでの臨任経験をもとに自分の考えをまとめました。塾での1回目の模擬面接後に、勤務校の管理者にも面接練習をみていただきました。臨任をしながら二次試験に臨む方は、管理者と練習することをすすめます。県の施策についての管理者の考え方など、普段聞けないようなこともたくさん質問することができました。また、落ち着いて、はっきりと丁寧に話せるように、塾の行き帰りの車の中で練習しました。
 二次対策は、同じ二次対策メンバーがいたからこそ乗り越えられました。わからないところを教え合ったり、いいところを褒め合って気持ちを立て直したり、真剣に取り組むなかにも笑いがある瞬間があったり…。この仲間と同期採用になれたらいいなという気持ちが強くなり、そのためにも「二次を突破しなければいけない!」という気持ちで、あとひとふんばりが効いたように思います。

6 さいごに

 大学卒業後から現在まで、10年以上県立高校で臨任を経験させていただきました。たくさんの学校を経験してきましたが、昨年度・今年度と勤務している現任校で仕事をするようになってから、考えが変わりました。現任校の生徒たちと接するなかで、中学校で国語を教えることに興味を持ち、魅力を感じるようになりました。そして、高校での勤務経験も、中学校で生かせる場面があるのではないかと思い、「中学校」という新たな場所で取り組んでみたいことが自分の中で明確に持てるようになったため、校種変更を決意しました。
 これまで、高校で国語を教えることに拘って試験を受けていましたが、時間だけが過ぎ、悪い意味で、採用試験が毎年の恒例行事のひとつになっていました。年を重ねるごとに、そして35歳を過ぎたあたりから、心のどこかで「もう合格することはできないのではないか」という気持ちがありました。でも、諦めることができない、大きな夢であり目標でした。
 沖縄教員塾に入塾し、浅い知識をごまかしながら教壇に立ち続けていたことを改めて気づかされました。試験に正面から向き合っていない自分が、試験を突破できないことを落ち込む資格がないことにも気づかされました。これまで、家事や育児で時間がないと思っていましたが、それは単なる言い訳に過ぎず、意識の持ちようだということを痛感しました。一次試験は自分との戦いだとは思いますが、現実にしっかり向き合わせてくれる状況が必要だと思います。それが、私にとっては沖縄教員塾であり、上高先生です。塾に早く行くようにしていた、と言っても、一番乗りだったことは数回です。残って勉強した、と言っても私以上に残って勉強している人がいました。自分以上に努力している人がたくさんいるということを認識させられました。それだけでも、もっと時間を作らなければ、もっと勉強しなければ、という意識づけになりました。校種は違えど、火曜日・土曜日の授業では全員が国語教員を目指している、というこの環境は、採用試験を受験する人にとっては恵まれた環境だと思います。授業で指名される緊張感や、教わる立場での授業、復習することの大切さ、今後の教員生活にも生きてくると感じました。
 また、塾生のみなさんへアドバイスできることとしては、上高先生との面談はぜひ受けて、先生が設定する以外の場面でも、試験にむけてどんどん相談に乗ってもらうことをすすめます。先生は、現実に沿ったことしか言いません。軽い励ましはしません。辛辣な言葉もたくさんもらいました。落ち込んだり泣きたくなったり(泣いたり)しましたが、いただいた言葉を反芻すればするほど、正論すぎて自分に足りない部分がはっきりとみえてきます。そして、今の自分がやらなければいけないことがみえてきます。
 一次試験までは、出席を取る際に聞いたことのある名前だというだけの人も、二次対策では短期間で助け合える仲間となります。二次対策になると、一次試験以上に、「この塾に通っていてよかった!」と実感できると思います。
 最終合格した今、たくさんのお世話になった方々に合格の報告ができる喜びをかみしめています。特に、週末子供たちとゆっくり過ごせる時間を持てるようになったことが本当にうれしいです。家族をはじめ、同僚・友人・恩師、多くの人の支えがあって手にすることができた合格だと思います。これから、中学校教諭として、挑戦しつづける姿勢を忘れずに、生徒たちとともに多くのことを学び続けていきたいと思います。